ウェディングのフリーランスが生き残るために必要なこと
これから競合だらけとなっていくであろうウェディングのフリーランス。婚礼件数は減っていき、フリーランスは増え続ける現状で、どうしたら軌道に乗せて不安のない生活ができるようになるのか。そのために必要なことを書いていきます。
目次
- まずは危機感を持つこと
- 技術(スキル)を磨く
- 競合調査をする
- 差別化をしっかりとする
- 価格設定の仕方を覚える
- マーケティングを実践する
- お金のことを学ぶ
- 最低でも半年は仕事がなくても生きていける貯金を作る
- 仕事で手一杯になる状態を避ける
- ロジカルシンキングを身につける
- 節約思考を捨てる
- ウェディング業界の他業種のことを知る
- 情報収集を欠かさないこと
- やらなければならない苦手な作業はアウトソーシングする
- 「難しいことはよく分からない」はやめる
- 事業をしているという自覚を持つ
- 体調管理の徹底
- 取引先の分散
- 業務効率化を図る
- 勉強する癖をつける
- なるべくレベルの高い人との人脈を築く
- みんながやっていることはやらない
- 自分のエゴとクライアントの満足度を混同しない思考を身につける
- 客観的に自分を見る力を身につける
- セルフブランディング
- 結婚式場側の立場を考える
まずは危機感を持つこと
ウェデングのフリーランスの月収は平均20〜30万ほどです。かなり低いのですが、それでも食べていける金額なので、あまり危機感を持っている方がいないというのが実状です。本来必要なフリーランスの最低限の売上は月80万〜100万です。よくフリーランスは社員の時代の3倍は稼げと言われます。フリーランスは全て自己責任で、事務所の費用も機材費も広告費も交通費も交際費も年金も全て自分で払わなければならないからです。今後の時代、今30〜40代の人達は予防医療や医学の進歩で100歳まで生きると言われています。そうなると賃貸にせよマイホームを持つにせよ、子どもが二人以上いた場合、普通の生活をするだけでも3億円ほど必要になります。今のうちにたくさんのことを学んでおかないと、あとで頭が固くなって吸収力や柔軟性がなくなった時に後悔する可能性が高まります。
技術(スキル)を磨く
フリープランナーならプランニング力やヒアリング力、提案力やデザインセンスを磨き、フォトグラファーなら写真の技術、ヘアメイクもビデオグラファーも技術は前提になければなりません。技術があればお客様に選んでもらいやすいし、人気が出れば価格も上げることができるでしょう。さらにクライアントからの要望に応えることも容易になるし、差別化もしやすくなります。新しく出てきたノウハウや機材は常に注目し、学び続けなければ変化の激しい今の時代ではすぐに置いていかれます。
競合調査をする
競合他社のことは絶対に分析しておきましょう。どんなところが成功していて、どこが上手くいってないのか、価格の相場はいくらなのか、どんなWEBサイトなのか、広告はどこに出しているのか、商圏はどこなのかなど、調べられることは全部調べます。価格は表にまとめて比べたり、それぞれのWEBサイトはブックマークしておくといいでしょう。競合調査をしたらポジショニングマップを作成してみましょう。競合他社がどの位置にどのくらいいるかが視覚化できて便利ですし、空いているところを狙っていかないと、不毛な消耗戦になりかねません。下の図はイメージです。値段や品質を軸にしてますが、それよりも特徴で分けると良いです。例えば映像なら、横軸はカッコいい映像↔面白い映像、縦軸はBtoB↕BtoCなどで分析すると、空いているポジションがより鮮明になります。
差別化をしっかりとする
競合他社と比べて自分は何が優れているのか、素人目線から見て明確な分かりやすさがあるのが理想ですが、それはなかなか難しいです。技術だけではなく、新しい知識を学ぶことも絶対に必要になります。フリーランスであれば自分のキャラクターや実績も差別化のポイントになりますし、クライアントに合わせたカスタマイズプランもできます。差別化についてはこちらの記事を御覧ください。差別化で悩んでいるウェディングのフリーランスの解決策とは?
価格設定の仕方を覚える
安易に相場に合わせて価格を決めてしまうと、その他大勢に埋もれる可能性が高いです。絶対にやってはいけないことは安売りで、価格競争に巻き込まれてしまうことです。価格競争では、必ず最終的に資本のあるところに負けます。戦略的な安売りでもない限り、お客様から価格で選んでもらおうという思考はなくしましょう。「価格ではなく価値で勝負する」ということが基本です。フリーランスはもし時間給で考えるなら最低1時間1万円を基準に考えると良いと言われています。一件の結婚式で打ち合わせやメール対応などのコミュニケーションコストを含めて10時間かかるなら10万円以上、20時間なら20万円以上という基準を目安にして考えましょう。10万円に設定したら、今度は10万円以上の価値とは何かを考えます。一番お客様に分かりづらい部分は技術です。自分が技術で如何に優れているのかを言語化できていなければ、お客様にはなかなか伝わりません。逆に分かりやすいのはパッケージングや拘束時間・量です。あれもこれも全部ついて10万円なら安く感じるでしょうし、フォトグラファーで例えると400カット納品よりも800カット納品と謳った方が、価値が高く感じるのは事実です。
マーケティングを実践する
あなたがどんなに良い商品・サービスを開発したとしても、誰も知らなければ存在しないのと同じです。どのように認知を拡大して、どんな方法で価値を伝えるかを考えなければなりません。WEBの活用は絶対条件になりますので、まずはWEBマーケティングを学ぶべきです。各SNSの活用方法やブログの書き方、広告の出し方は最低限覚えなければならないことです。そして、毎日のように投稿してWEB上にある資産を増やし続けなければなりません。WEB上にある資産とはSNSのアカウント、Youtubeの動画コンテンツ、ブログ、サンプル写真や動画、商品やサービスの説明ページなど半永久的にWEB上に残って、アクセスを集め続けてくれるもののことです。
お金のことを学ぶ
まずは事業用の口座とプライベートの口座に分けること。自分の毎月の給料を決めるような感覚で、生活費は決められた金額をプライベート用の口座に移し、残ったお金で事業を回していくようにしましょう。そして、月々の固定費がどのくらいで、損益分岐点売上(いくらの売上なら黒字になるのか)を把握しておくことも大切なことです。また、使い方も当然重要で、消費・浪費・投資の三種類のバランスをどうしていくのかを考えなければなりません。生活水準をどの程度にして、娯楽にどのくらい費やすか、セミナーや本などの自己投資にいくら使うかなど、人それぞれ違いはあるでしょうが、数値を見える化することが大事です。お金の使い方についてはこちらを参考にしてください。フリーランスが最低限知っておくべきお金のこと
最低でも半年は仕事がなくても生きていける貯金を作る
フリーランスは会社員と違い、固定給があるわけでもなく、賞与も出ません。特にウェディングでは、病気や怪我、事故、天災のリスクは常に抱えていて、いつ仕事がなくなっても生きていけるようにしておく必要があります。計画的に貯金を増やし、常にリスクに備えておかなければなりません。最低でも120万円程度の貯金は絶対に必要です。また、事業用としても融資を受けないのであれば、大きな投資に備えて貯蓄を増やしておかなければなりません。
仕事で手一杯になる状態を避ける
独立して最初のうちは、如何にスケジュールを埋めるかを考えがちです。仕事がないと不安で、忙しいと充足感を得られるからです。しかし、正解は逆で、如何にスケジュールに余裕を作っておくかの方が大切なのです。フリーランスはリソースがないので、基本的には一日に何件もの仕事を掛け持つことができません。仕事の量ではなく、高い価値を提供して高い報酬を得られる仕事に集中すべきなのです。一日3万円の仕事を20日やるよりも、20万円の仕事を3日やるためにはどうしたらいいかを考えます。
ロジカルシンキングを身につける
ウェディング業界の特徴の1つに、感情的な人が多く、論理的思考の人が少ないというものがあります。普段から口癖のように「お客様のために」というのですが、その裏ではパートナーや下請けが犠牲になっていることがほとんどで、ビジネスとしての思考が足りないのです。感情論では解決しないのがビジネスで、論理的に考えて、全員が利益を享受できる仕組みを整えられる人にならないと、チームを作ったりする時に最終的に人は離れていきます。
節約思考を捨てる
会社員は固定給です。貯蓄を増やすには固定費を下げたり、浪費を抑えたりしなければ増えません。しかし、フリーランスは違います。収入に上限があるわけではありませんので、節約するよりも、どう増やすかを考えるべきです。例えばWEBサイトも、今は誰でも無料で簡単にできますし、名刺やパンフレットも自分で無料で作れますし、業者に頼んでもかなり格安で作れます。でもそうやって無料で、もしくは安く作ったもので効果があるのかといえば、ほとんどの場合そんなことはありません。自分で作るならそれなりに勉強しなければなりませんし、時間も相当費やさなければなりません。
ウェディング業界の他業種のことを知る
結婚式の現場はチーム力が大事とはよく言われます。実際はチーム力と呼べるほどのものになっている式場はほとんどありませんが、それはさて置き、チーム力が必要なことは間違いないです。そうなると当然、各スタッフの役割を分かっておかなければ連携も取りづらいし、緊急時の対応もできません。フリープランナーの方ならそれぞれの職種の人と普段から積極的に交流しているでしょうから、ある程度は把握していますが、それ以外の方は、自分の仕事以外の人たちの役割を知りません。結婚式には牧師、聖歌隊、メイク、アテンド、フォトグラファー、ビデオグラファー、MC、フローリスト、キャプテン、サービススタッフなど様々な人が働いていて、それぞれ役割を持っています。自分の役割を他の人に知ってもらうのと同時に、他の人の仕事についても知っておくことは絶対にマイナスにはなりません。
情報収集を欠かさないこと
ウェデング業界に関する情報収集はもちろんですが、ITやAIの分野に関すること、他業界の最先端の情報、社会情勢や政治に関することも自分事として捉えていくことが必要です。スマートフォンがあれば移動時間や空き時間にいつでもチェックすることができるので、大した手間にはなりません。今の時代のビジネスは情報を如何に多く知っているかで競合よりもかなり有利な位置に立てます。ウェデング業界は他業界よりも5年は遅れていると言われています。それほど勉強しない業界なので、逆に言えば他業界の成功例を仕入れることができれば、成功する可能性は跳ね上がります。実際にFirst Filmも他業界からのアイデアを積極的に持ち込んで、その全てが上手くいっています。
やらなければならない苦手な作業はアウトソーシングする
請求書を作ったり、資料を作ったり、電話対応やメール対応、期日管理、入金確認、記帳、確定申告、郵送など結婚式の現場以外でもフリーランスはやることが多いです。そして大抵のフリーランスはこの手の事務作業が苦手で、返信が遅かったり、請求書も提出が遅れたり、納期も守れなかったりします。信用を失うくらいならお金を払ってでも他の人に任せるべきです。苦手な業務に時間を割くのは一番非効率なことで、アウトソーシングして空いた時間で支払った金額以上の報酬を得た方がよっぽど効率的です。
「難しいことはよく分からない」はやめる
「私は難しいことはよく分からないので」と平気で言うフリーランスがいます。弁護士や税理士にしか分からないことなら仕方のないことです。しかし、学ばなければいけないことに対して「私は難しいことはよく分からないので」と言ってしまうと、それ以上その人が成長することはありません。分からないことは分かるようになるまで勉強するという、当たり前の癖をつけるようにしましょう。
事業をしているという自覚を持つ
フリーランスであろうが経営者であろうがビジネスをしているという点で違いはありません。「あまり大きくしようと思ってないから」という思考の人も多いですが、一部成功している人を除いてこの思考は危険です。ビジネスとは下りエスカレーターを上るようなもので、現状維持と言って立ち止まってしまえば、自動的に下っていきます。全力で駆け上がっても売上を維持できない場合があるのがビジネスの世界なのに、現状維持を目標にして上手くいくはずがありません。
体調管理の徹底
フリーランスの天敵とも言えるのが病気です。インフルエンザやノロウィルスはもちろんのこと、風邪やストレスが原因の病気などもそうです。普段から体調管理を徹底していないと、大切な時に病気や体調不良に陥ってしまいます。結婚式当日にそんなことになってしまえば最悪で、取り返しがつかない事故に繋がりかねません。少しでも違和感を感じたら休養をとったり、病院で検査してもらってりして、常に体調には気を配っておきましょう。
取引先の分散
フリーランスにとって1社の取引先だけに依存してしまうことほど怖いことはありません。そこが倒産したり、取引が中止になれば、全ての収入が途絶えてしまいます。そして、そのリスクがあるがゆえに、取引先に対してはイエスマンにならざるを得ない状況になってしまいます。売上5%ずつで20社に取引先を分散させるのが理想と言われていますが、それは正直難しいでしょう。しかし、それでも複数の取引先を持ち、収入源を分散させておくのはリスクヘッジになります。
業務効率化を図る
知らない人が損をする時代となった今、ITを学び、ツールを活用することは業務効率化の基本です。Googleが提供している様々なツールや、LINEワークス、チャットワーク、Slack、キントーン、Trello、会計ソフトのfreeeなど、業務効率になり得るツールはたくさんあります。結婚式場では未だにFAXを使っているところがほとんどですが、フリーランスは出来る限りツールを活用して無駄な業務工程を無くしていきましょう。
勉強する癖をつける
当然ですがフリーランスを継続させていくにも、事業を営むにも、常に人よりも勉強することが必要です。いつまで経っても分からないことは尽きないものです。分からなかったら諦めたり放置しないで勉強すればいいのです。アイデアも同じで、良いアイデアが思い浮かばないということは基礎知識が不足しているからです。様々な知識を身につければ組み合わせで必ずアイデアは思いつきます。読書や動画学習、音声学習を生活習慣に取り入れて、勉強する癖をつければ、何もやっていない人に比べて1年後には凄まじいほどの知識の差が出来ています。
なるべくレベルの高い人との人脈を築く
何かに特化した武器を持っている人や、特殊な人脈を持っている人、自分にないものを持っている人の人脈は作っておいて絶対に損はないです。同業者の付き合いが一番話が分かり、盛り上がるのですが重要度は低いです。特に自分と同じような環境にいる人とはなおさらです。お互い上手くいっていて、成長できる仲でないのならば、特に付き合う必要はありません。
みんながやっていることはやらない
周りのみんながWEBサイト作ったから私も作ろう。みんながInstagramをやり始めたから私もやろう。そのタイミングではもう遅いです。誰もやってないことをやるから上手くいくのであって、みんながやっていることをやっても埋もれるだけです。やるなら他の人と違う方法でやるしかありません。例えばウェディングのWEBサイトはほとんど同じに見えます。ピンクや白色が基調のサイトが大多数で、違いがわかりにくいです。そこで同じような色やデザインにしても意味がありません。むしろ逆のことをやったほうが目立ちます。例えばFirst FilmのWEBサイトは黒が基調です。外国人のモデルや芸能人を載せるわけでもなく、親近感の湧くモデルをトップにしています。
自分のエゴとクライアントの満足度を混同しない思考を身につける
例えばフォトグラファー。レタッチに物凄く時間をかけるフリーランスがいます。プロとして当たり前のことではありますが、では一日かけるのと二日間かけて補正するのとで、お客様満足度はどれだけ違うのか。それよりも納期を一日でも早くしたほうが喜ぶのではないのか。どこまでがプロとしての仕事で、どこから自己満足なのかのラインをしっかりと持つことが重要です。
客観的に自分を見る力を身につける
マーケティングにせよブランディングにせよ、商品開発にしても営業にしても自分がどう思うかよりも相手がどう思うかの方が遥かに重要です。自分がこっちの方が良いと思っていてもABテストをしてみたら違う方が効果が高かった時に、素直にデータに基づいた決定・決断ができるかどうかです。ウェディング業界では感覚や主観で物事を決める人が多いからマーケティングが上手くいかないのですが、客観的な視点を持ってデータに基づいた分析が冷静にできれば自ずと結果はついてきます。
セルフブランディング
「あなただからお願いしたい」とお客様に言われるようになるためには、ヒアリング力や提案力はもちろんのこと、自分の言葉で自分のことや商品やサービス対する想い、結婚式に対する想いを発信していかなければなりません。そのためには色々な方法があります。素をさらけ出すことも1つの方法ですし、キャラクターを作ることも方法の1つです。私には個性がないと言う人もいるかもしれませんが、そう思う人は恐れることなく自分の意見をどんどん発信していけばいいと思います。間違っていても全く問題ありません。とにかく自分の気持ちや意見を発信すれば、そこに共感した人たちが必ず集まってきます。
結婚式場側の立場を考える
持ち込みや下請けの場合、つい一方的な自分の意見を主張してしまいがちです。例えば持ち込み規制や禁止にしている式場に対しておかしいと思うことや、掛け率や下代叩きなどです。相手の立場に置き換えた考えもきちんと持った上でなぜそれが間違っているのかを考えること、是正するために自分はどうしたらいいのかを考えることが大切です。ただ文句ばかり言っていても仕方がないことなので、どうすれば新郎新婦にとって最大の利益になるのかを考えるべきです。
1985年生まれ33歳、東京都練馬区出身
日給1万円以下でアルバイトのビデオカメラマンとしてブライダル業界を経験し、結婚式場の販売価格と現場に払われる金額のあまりの差に疑問を持ち、一案件15000円〜40000円の下請け・孫請けの仕事で結婚式の現場に出ながらフリーランスとして活動を開始した。
25歳の時にFirst Filmというブランドで創業し、新郎新婦が自由な選択肢の中から好きなものを適正価格で選べるようになることを目指し、インターネットで直接選ばれる仕組みを構築。
売上は順調に伸び、2年後の27歳の時に株式会社VARIEを設立。写真や企業向け映像も事業として開始し、創業以来現在まで7年連続で売上最高値を記録。
現在はもう一つの会社、株式会社FOOLを立ち上げ経営の他にも現場の撮影をしながら講師業やコンサルタントとして活動中。