ウェディングのフリーランスがチームになるまでの過程と行動
ウェディング業界に関係なく、フリーランスは行動する人が伸びると言われています。では、実際にどのくらいの行動量が必要なのか、時間、アクションの数、色々手を出すほうがいいのかどうなのか、そしてチームになるまでに何をするべきなのか、そのあたりを考察していきます。
無理にチームになる必要はありませんが、ウェディング業界で仕事をする限り、様々なリスクを常に抱えている状態になります。そのリスクがある程度無くなるのが5〜10人規模のチームになり、自分が倒れても仕事が回る状態になったときです。
目次
ウェディングのフリーランスがチーム化する理由
そもそもウェディングのフリーランスがチームにする理由は何なのか。まずはそこから書いていきます。ウェディングとフリーランスという相性は、リスクという観点から見れば悪いです。病気、事故、怪我、天災、その他不可抗力があったときに、取り返しがつかないことは誰でも分かっていることだと思います。
またウェディングに限らず、多くのフリーランスの働き方は、自分自身が動いて対価を得るという、いわゆる労働集約の働き方になり、身体が資本という状態にあります。そうなると、自分が何かしらの事情で働けなくなれば、その期間の収入は0になってしまいます。
これらのリスクを回避する方法として、チーム化・組織化を選択するフリーランスは徐々に増えてきています。逆に言えば、1人でやっていく以上、常にこのあたりのリスクが付き纏うのが、ウェディングのフリーランスです。
フリーランスがチームになるまでの過程は3段階
フリーランスから5〜10人規模のチームになるまでには大きく分けて3段階あります。
- 適正な単価の仕事量の確保
- ビジョンや志に共感する仲間をSNSで発信して集める
- 事務所を借りて効率化を図り、連動性のある別事業を始める
95%以上の人がまず1段階目で行き詰まります。その原因の多くは行動量不足にありますが、動いていても間違った行動をしているからうまくいかない人もたくさんいます。
また、好きなことをやりたいという欲求が先に来てしまい、やりたいことを優先してやるようになってしまう人もいます。まずはやるべきことをやってから、やりたいことをやったほうが、不安やリスクが少なくなります。それでは、その環境を作り上げるのに、まずはどのくらい何をすればいいのか、そこから考えていきます。
フリーランスって一日どのくらい仕事すればいいの?
まずは働いた時間です。例えば毎日仕事を8時間しているとしましょう。日本の会社では8時間労働の週休二日制なので、始業時間や終業時間を決めていなくとも、これを基準に働く時間を決めているフリーランスも多いです。
内容は、フォトグラファーなら撮影や編集、プランナーなら打ち合わせ業務や現場、各取引先との交渉や調整、ヘアメイクならメイクリハや打ち合わせ、前撮りなどですが、これを毎日繰り返していて成長に結びつくのかということです。
技術的な成長には間違いなく繋がると思いますが、それ以外を伸ばすことは難しいです。ビジネスをやる上で技術は顧客満足度を上げるための手段の一つです。重要なことですが、それだけでは続けていくのは難しいです。
ただ、今の時代は技術を高めれば様々な人から仕事が来るようになります。発信する術がたくさんあるので、クライアントには見つけてもらいやすいでしょう。
自分の時間を切り売りする働き方になってしまう可能性が高いですが、生計を立てるには十分な収入にはなります。しかし、下請けや孫請けの場合は少し状況が変わってきます。
例外はありますが、そもそも自分で集客したお客様ではないので、SNSにアップするにも壁ができます。仕事をしている8時間の時間以外は集客するための時間に費やさないと、下請けや孫請けからは抜け出せなくなります。
具体的に何をどのくらいすればいいのか
職種や状況によって違いがあると思いますので、難しいことですが、もしある程度の収入や自由な時間を求めるのであれば通常の業務や作業以外に4〜6時間くらいは勉強や集客の仕組みづくりに必要でしょう。
Instagramの更新は毎日、ブログも出来る限り毎日、最低でも週2記事以上更新、もしくはより質の高い誰にも負けないような内容の記事を月1更新。WEBサイトのコンテンツ強化(サンプルの追加や文章の改善)も週に1回以上必要です。(詳細はこちらの記事にも書いてありますので参考にしてください。ウェディングのフリーランスが下請け・孫請けから脱却するまでの具体的な手順)
そのための時間を作るためにはアウトソーシング、または人を雇うことが必要で、再現性のある仕事を任せることです。そしてより価値の高い仕事、自分にしかできない仕事に没頭し、利益を増やしていきます。
さらに、その利益を再投資してまた利益を増やせばチームはより大きくなり、時間が作れるようになります。ある程度の規模(5〜10人くらい)になると、通常の業務や作業は自分自身がやらなくとも回るようになります。
何時間働くのも自由ではあるけど、最初は限界まで頑張る
冒頭でも書きましたがウェディングの場合、ずっと現場で働き続けることは現実的ではありません。年齢による結婚適齢期のカップルとの価値観の違い、体力の低下、病気のリスクなど、ウェディングはリスケが出来ない仕事で、しかもリピーターではないのでリカバリーの提案ができないのです。
企業案件でやり直しが効くような仕事であれば万が一のことが起きても、謝罪して日程を再度調整すれば何とかなるかもしれません。ですから他の業界の仕事よりもリスクがあります。
そこを踏まえた上で考えると、代わりの人がいる状態にしたり、現場は若い人に任せられる仕組みづくりに力を注いでいくことが正解でしょう。それを考えると、先程も書いたように、WEBで自動的に集客できる仕組みづくりは必要不可欠と言えます。
そして、仕組みを作る作業は簡単ではありますが、楽ではありません。WEBサイトの構築、コンテンツの強化、想いを込めた情報発信、サンプルの更新、SNSの更新、広告、やるべきことは多々あります。
そしてこれは短期で集中したほうが上手くいくのです。ダラダラしていたら、ほとんどの人が途中でやらなくなります。だいたい3〜6ヶ月で仕組みが整うので、後はかなり楽になります。
ただし、間違ったやり方をしていてはいつまで経っても成果に結びつきませんので、注意が必要です。集客に困らなくなったら、次は共感してくれて協力してくれる人たちとチームを作ることです。
チームビルディングに必要なもの
1人である程度売上も作れるようになり、人気も出てきたフリーランスの悩みはチーム化、組織化です。仕事の依頼や、お客様からのお問い合わせはたくさん来るけど、身体が一つしかないので断らざるを得ない。全部1人で対応していて、パンク状態でクレームにも繋がってきた。
自分以外の人でも現場対応できるようにしたい。病気などのリスクも不安。セルフブランディングに力を注いできたので、ブランドの認知度よりも個人名のほうが先行して認知されている人ほど、苦労していることでしょう。それではチームにするために必要なものはなにかを考えていきます。
チームの定義
ウェディングの場合、チームと言ってもその定義は様々です。
- 一つのプロジェクトのために、他ジャンルのフリーランスが集まる場合(例えば、ウェディングプランナーが中心になって、MC、フローリスト、ヘアメイク、フォトグラファー、ビデオグラファー、着付け師等の方々とパートナーとして一緒にやる場合など)
- 自分の代わりに他の現場に行けるように、同業のフリーランスと手を組む場合
- 他業種の人と協力して、お互い仕事を依頼できるような関係性にする場合
- 組織として機能するように、様々な長所を持った社員やアルバイト、フリーランスをバランスよく配置する場合
大別すると以上の4つになりますが、どの場合でも、基本的にはやることに大差はありません。
チーム作りはビジョンが大事
チームを作るためには自分のやりたいことやビジョンに共感してくれる人を集める必要があります。多くのフリーランスはお金よりも「誰と仕事をするか」にこだわります。勿論報酬も大切ですが、優秀な人ほど誰と組むかを意識するものです。これは、フリーランスに限りません。
セルフブランディングを常日頃からしている人ならば、仲間を集めることは難しくありません。自分の志ややりたいこと、どういったビジョンなのかを発信していけば、必ず共感する人は現れます。問題は集まってくれた人たちを繋ぎ止めるだけの給料が払い続けられるか、仕事量を確保し続けられるかです。
集まる段階では、報酬よりも「誰と組むか」が大切ですが、集まったあとは、それぞれの生活がかかっている以上、報酬や仕事量も大切になってくるのです。そのためにも、やはり集客の仕組みは絶対的に必要になるわけです。
仲間を集める方法は、FacebookなどのSNSを活用したり、求人広告を出したり、多々ありますが、常に意識して活動していく必要があります。チーム作りは最初の2人くらいまでが大変ですが、3人以上のチームになれば、人も集まりやすくなります。
そして、3人以上のチームになったら、今度は役割分担をします。全員が同じように仕事をしていてはチームは上手く機能しません。リーダーである自分が、戦略を考えて、指示を出していかなければならず、徐々に作業から離れていかなければなりません。
全員が似たような働き方をしているチームは伸びない
3人いたら3人ともが同じように働いているチームは伸びません。よく聞く話ですが、3人で一緒に独立して、チームとして活動していたけど、途中で解散するといった例は知る限りでもかなり多いです。
その共通点が、全員が同じ立場で同じように仕事をしている点です。誰かが方向性や戦略を考えて、他の2人が実行部隊になるといった役割分担が出来ているチームは伸びていきます。同じスキルを持った人同士が同じように働いていてもチームの良さは発揮できません。例えば集客担当、現場担当、経理担当のように、主任務を分けることが必要です。
事務所を借りるタイミング
今の時代、事務所はなくともチームは機能しますし、ビジネスをする上で大きな影響はありません。しかし、ウェディング業界でBtoCを展開するのなら、打ち合わせスペースがないと非効率ではあります。
首都圏ならシェアオフィスが充実しているので、設備投資など初期費用が抑えられる点からも利用するのもいいと思います。3人だと月額7〜15万円ほどで借りることができます。1人3万円〜5万円です。
普通に事業用の事務所を借りるとなると敷金礼金も個人で借りるより高くなりますし、プリンターや回線工事、家具などの初期費用がかかりますが、シェアオフィスなら最初からある程度整っています。チームでの粗利益が月額120万円を超えるようになったあたりで、事務所利用も視野にいれるといいと思います。
事務所を借りる利点
事務所を借りることによって、どんなメリットがあるか。それを理解して、払う金額に見合うと判断したら借りるべきですし、必要ないと思えば、そのまま続ければいいと思います。
モチベーションアップに繋がる
まずは自分たち専用のスペースが出来ることでのモチベーションアップです。ただの感情的な部分ではありますが、事実やる気はみなぎります。
生産効率の向上に繋がる
職種にあった配置を自由にカスタマイズ出来るため、自宅でやるよりも生産性が上がります。さらにBtoCでお客様との打ち合わせスペースがあれば、毎回相手の指定する場所に出向く必要もなくなり、交通費や時間が節約できます。
チームでのコミュニケーションの時間が増える
同じ場所で働くということは、それだけそこで働く人たちとのコミュニケーション量は増えます。今はLINEやSkypeなど、それぞれが別の場所にいてもコミュニケーションはとれますが、やはり直接会うということに勝るものはありません。
アルバイトや社員が雇える
アルバイトやパート、社員を募集するにしても、事務所がないとなかなか集まりません。アウトソーシングだけで全てをこなすには、余程仕組み化がうまい人でないと難しいです。特にウェディングの仕事は技術職が多いので、新人やアルバイトに教えるにも直接会ってやり方をその場で教えることが一番効率が良い場合が多々あります。
共有資産の管理ができる
PCやカメラ、ハードディスク、プリンターなど、チームみんなで買ったものが有効活用できて共有しやすくなるのも事務所があるメリットの一つです。また、書類などの管理や、本の共有もメリットの一つです。各自が自宅で作業している場合はなかなかそういったことも出来ないです。
WEBサイトに所在地が書ける
小さいことではありますが、フリーランスで自宅作業の場合、WEBサイトに住所を載せられない人もいます。事務所利用禁止の場合や、ネット上に住所を公開したくない場合です。
事務所を借りれるくらい成長したチームの次の段階
ここまで成長したチームは節税対策などで法人化している人たちも多いのではないでしょうか。では、この次の段階はどうすればいいのか。
誰がいなくなっても回る仕組みを整える
集客の仕組みは出来上がっていてチームも5〜10人になっている場合、次に考えるべきことは属人的になっているプロジェクトや仕事を他の人でも出来るようにすることです。1人に頼り切った仕事は再現性がなく、その人にしか出来ないものになってしまいます。
チームの運用を考えると、誰がやっても上手くいくような仕組みにするのが一番のリスクヘッジとなります。ただ、社員にしてもチームの1人としても、誰にでもできる仕事の価値は希薄なので、自分にしか出来ない仕事を生み出すようにすることが価値を高めることになります。
チームのリーダーは仕組み化し、各個人は自分にしか出来ないことをやって価値を高める、矛盾しているように聞こえますが、このイタチごっこがチームの成長のために必要なのだと思います。
ただ、これからの時代を考えると、多様性のある個人が集まったチームの方が強くなると思います。しかし、そのためには全員が何かしらに長けている能力の持ち主であることが不可欠な要素ではないかと思います。
シナジーのある新規事業を立ち上げる
既存事業がある程度回るようになってきたチームの次の段階は、連動性のある事業を立ち上げ、複合的なビジネスモデルを作ることによって差別化を図ることです。
例えばフォトグラファーなら前撮り事業、スタジオでの家族写真、マタニティフォト、ワークショップ、関連性が高い映像事業でもいいでしょう。今は組み合わせの時代です。一つのことに固執せずに、広い視野を持って、組み合わせによってオリジナリティを生み出すことが重要です。
もちろんドローン産業やVR、AIのように新しい分野を自分で生み出すことができれば良いのですが、いきなりそこに行くのは無理ではないかもしれませんが、難しいです。
技術革新によって職人の技は通用しなくなる
あらゆるものが技術革新によって変わりつつあるということは、常に意識しておかなければなりません。「そんなことはない!」という人ほど、昨今の技術の進歩を勉強していない人です。
例えばエンドロールは自動編集できる時代になるでしょうし、カメラは自動シャッター機能や、トリミング機能が出てきて、色補正も自動化されるでしょう。プランナーも従来のパッケージ化されたプランなら、ipadで事足ります。実際AIプランナーが出てきているくらいです。
フローリストによる空間プロデュースも機械学習で最適解を出せるようになり、それに合わせて装飾していけばある程度は誰でもできるようになります。一流の人であれば、機械に代替されるのはまだ先でしょうが、価格差は縮まります。
80点のものが低価格で簡単に出来るようになれば、数十万円の価格差があるのに100点のものを選ぶ人は少なくなるでしょう。チーム化・組織化出来ても未来のことは常に考えて動いていかなくてはなりません。
様々な選択肢がある状態にしてからは自由度が増える
ここまでの規模に成長できたチームは、かなり自由になり、選択肢が増えていることでしょう。いくつもの売上の柱を作り、チームのリソースにも余裕があれば、やりたいことを叶えられる環境に近いと言えます。この後は、地域活性化に協力して地元を盛り上げたり、フリーランスを応援する事業をしたり、趣味に近い好きなことをやりやすい状態になります。
資金調達して勝負するも良し、投資事業を展開しても良し、思い切って新郎新婦とフリーランスのプラットフォームビジネスを始めてもいいでしょう。(すでにいくつかあるので、差別化ができればの話ですが)
ただ、ここに至るまでの過程で、ほとんどの人が脱落していきます。また、チーム化や規模拡大を望まない人も多いでしょう。それも個人の自由ですが、この状態までにならないと様々なリスクがあり、それを解消するための一つの案として今回はこの記事を書きました。あくまでも参考にするレベルでいいので、頭の片隅に入れておいていただき、いつか皆様の役に立つ日が来れば嬉しいです。
1985年生まれ33歳、東京都練馬区出身
日給1万円以下でアルバイトのビデオカメラマンとしてブライダル業界を経験し、結婚式場の販売価格と現場に払われる金額のあまりの差に疑問を持ち、一案件15000円〜40000円の下請け・孫請けの仕事で結婚式の現場に出ながらフリーランスとして活動を開始した。
25歳の時にFirst Filmというブランドで創業し、新郎新婦が自由な選択肢の中から好きなものを適正価格で選べるようになることを目指し、インターネットで直接選ばれる仕組みを構築。
売上は順調に伸び、2年後の27歳の時に株式会社VARIEを設立。写真や企業向け映像も事業として開始し、創業以来現在まで7年連続で売上最高値を記録。
現在はもう一つの会社、株式会社FOOLを立ち上げ経営の他にも現場の撮影をしながら講師業やコンサルタントとして活動中。