ブライダル業界のビデオカメラマンが収入を上げる5つの方法
目次
ブライダル業界のビデオカメラマンがギャラを上げる方法は5つ
ブライダル業界のビデオカメラマンは結婚式のビデオ撮影をする仕事で、新郎新婦のために一生に一度の門出の晴れ舞台を記録に残すことや、披露宴の最後に当日の映像を編集したエンドロールを撮影・編集することを主な業務としています。ブライダルビデオの業界は、結婚式全体の中では受注率が低く、50%前後が平均となっています。これはドレスや写真、花、ペーパーアイテム、美容と比べると著しく低い数字です。また、新郎新婦の予算の中でも、最も削られる対象となりやすく、それだけに価値を感じられていないとも言えます。しかし、昨今は世の中全体で動画需要が高まっており、ブライダル業界でもビデオ業者の企業努力もあり、徐々に需要が上がってきています。そんな業界で働くブライダルビデオカメラマンが、今後も生き残るために必要なことの中に、単価を上げることが必ずあります。今回は単価を上げる方法とともに、今後どのようにするべきかということを書いています。
1 ギャラの高いビデオ業者と複数契約して掛け持つ
現状ブライダル業界のビデオカメラマンのほとんどが、どこかの業者の下請けで働いています。一件あたりのギャラは安いところで10000円前後、高いところで40000円前後です。規模が大きい業者ほどギャラは安くなりますが、件数は安定していて、閑散期でも一定の数の仕事を請けられます。月20万〜30万円で、平日は編集業務、土日は結婚式の撮影をしています。(平日はサラリーマンとして全く違う業種に就職し、副業として土日は結婚式の撮影をしているフリーランスもかなりいます)一方で規模が小さい業者はギャラが高いですが、件数が少ない傾向にあり、ブライダルだけで生計を立てることは難しいのが実態です。しかし、一件あたりの単価は高いため、複数の業者から仕事を請けて、なるべく土日の空きを減らしたり、平日も結婚式以外の撮影をすることで月の平均収入は40万円〜60万円以上になります。
ただし、デメリットとして、大安に仕事が集中しやすいので、いくつかの業者からすれば忙しい日にいつも空いてない人になってしまうため閑散期に仕事を振ってもらえなくなる可能性もあります。また、高いギャラの業者は技術力や年齢、外見を重視するところも多く、他の人より能力が優れていないと仕事をもらえない場合もあります。ギャラの高い業者はGoogleの検索で簡単に見つかります。「ブライダルビデオカメラマン 求人」などのキーワードで検索してみましょう。
2 ビデオ業者との契約時や更新時に条件を交渉して、有利な価格で仕事をもらう
現状大手であれば、どこのビデオ業者も人手不足になっているため、比較的交渉は上手くいきやすいです。契約時に件数保証をしてもらったり、単価を上げることができれば高単価で安定した件数を受注することができます。具体的には25000円〜35000円くらいです。しかし、これも企業側に「それでもこの人にお願いしたい!」と思わせるだけの要素が必要になるので、簡単ではありません。経験だけではなく、技術やコミュニケーション能力、実績がないと難しいでしょう。繁忙期前の12月〜2月、6月〜8月の時期であれば、案件が増える時期に備えて人を確保しておきたい企業側のニーズにマッチしますので、タイミングはその時期がオススメです。更新時は、それまでの実績や努力によって信頼されていれば、条件を飲んでもらいやすいです。ただ、ブライダル業界はフリーランス側からギャラ交渉を積極的にしていかない限り、変わることはなかなかありません。フリーランスに対して明確なギャラの基準を設けている企業はまだまだ少ないからです。ちなみにきちんとした契約書を結んでいるところも多くはありません。更新時に交渉する時は、自分がその企業にとって必要で、代わりのいない価値のあるフリーランスになれているかを考えましょう。日頃からその企業の社員に迷惑をかけたりして、よく思われていない人が交渉すれば、最悪の場合仕事を振ってもらえなくなるので注意が必要です。
3 ビデオ業者からの下請け仕事ではなく、自分でWEBサイトを作って集客する
1と2の方法は下請けであることを前提にしていましたが、もう1つの方法として、インターネットを使って直接新郎新婦に自分をアピールする方法があります。SNSやブログで自分の意見を積極的に発信し、エンドユーザーに直接選ばれれば、中抜きされることなく価格も自由に設定できます。今の時代に一番マッチしているやり方ではありますが、商品開発、営業、販売、撮影、編集、検品、品質・納期管理、納品、入金管理、アフターフォローなど、やるべきことが増えるので、アウトソーシングの仕組みを上手く築き上げないと朝から晩までずっと働きっぱなしになってしまいます。
また、式場によっては持ち込み規制をしているところもあるので、せっかく新郎新婦から選ばれても、どうにもならない状態になったりします。それでも収入は月に100万円以上は得られるでしょうし、やりがいも一番あります。
さらに今まで経験したことのないこと、例えば商品開発や営業などを身をもって知ることができるので、様々な能力が身につきます。今はホームページもブログも無料で誰でもできます。ただ、今まで撮影や編集のことだけに力を注いできた人が、Webのことを学ぶのは大変です。特に歳を重ねているフリーランスほど、新しい分野のことを知ろうとするには抵抗があります。ブログも重要性は分かっているのに続かない、SNSも続かないという人が跡を絶ちませんが、だからこそやり続ける人が上手くいくのです。
4 フリープランナーやプロデュース会社と契約して映像の仕事をもらう
フリープランナーやプロデュース会社と契約することができれば、高単価な仕事になりやすいです。式場からの仕事をビデオ業者を通して請ければ二次請けになりますが、この方法だと一次請けということになり、その分マージンはなくなります。今は会場を自分で持っていなくても結婚式のプロデュースはできます。会場もなるべく土日を埋めたいので、どんどん受け入れる体制を整えてきています。この方法だと一件10万円〜20万円前後で受注することができ、こちらも月の収入は100万円を超えることができますが、やはりこちらも、選ばれるだけの能力が必要となります。また、フリープランナーやプロデュース会社は、結婚式場やビデオ業者と違い、件数を多く抱えているわけではありません。(大手は例外ですが)複数のフリープランナーと契約し、なるべく土日に空いている日をなくしましょう。
5 様々な人脈を作り、ブライダル業界の関係者から映像の仕事を請ける
フォトグラファーやヘアメイク、司会者、ドレスショップ、フローリストなど、ブライダルに関わる方との人脈を築き、人から仕事をもらう方法があります。ブライダル関係の飲み会やセミナー、ワークショップに積極的に参加し、時には自分で人を集めて、あらゆる人との信頼関係を作ることによって仕事を勝ち取るのですが、この方法も、優れたコミュニケーション能力、映像に対する技術力が求められます。日本のウェディング業界は村社会的なところがあるので、まだまだネットよりも人づてで仕事がもらえるのは事実です。もちろん現場での能力が高く、その人にとってのお客様が喜んでくれなければ、次の仕事がくることはありません。花嫁会などに参加して、プレ花嫁さんの相談相手になるのも有効な手段となります。昨今のウェディングのメディアは、どれも同じようなことが書いてあって、どんな情報を信じていいかわからず、より身近に感じる先輩花嫁に相談するという人は増えています。また、例外として、友人からの集客という方法がありますが、安定した数にするためには至難の業なので、今回は簡単に説明します。特に難しいことなく、ひたすら友人の数を増やして紹介してもらったり、友人の結婚式を撮影するということです。facebookやインスタなどで、10000人以上フォロワーがいる人でないとまず不可能だと思いますが。
ブライダル業界のビデオカメラマンが生き残る道は??
上記1〜5のうち、3と4ができないと、今後は難しくなってきます。理由は簡単で、結婚式を行うカップルが減少していき、フリーランスのブライダルビデオカメラマンが増えていくからです。少子化による影響は勿論のこと、ブライダル業界に対する不信感などにより、ナシ婚層と言われる「結婚式に価値を感じない人」が増えているのは誰でも知っていることです。
フリーランスのビデオカメラマンが増加していく原因は3つ
先ほども書いたように、フリーランスのブライダルビデオカメラマンが増加するということは、限られた仕事を奪い合うことになります。増加していく原因として以下の3点があります。
1 副業が当たり前の時代になりつつあるという、時代背景
今の時代は、全世界的にフリーランスは激増していて、アメリカでは人口の3分の1が副業または自営業をしているということです。日本でも副業を認める会社はどんどん増えていて、遠からず副業していることが普通の時代になります。
そうなれば当然結婚式の撮影に興味を持つ人も増えるでしょうし、実際副業にする人も増えることでしょう。
2 既存のブライダルビデオ業者の社員が独立してフリーランスになる可能性が高くなるから
どの業界でも給与所得の低い業界の社員は、転職または独立する傾向にあります。毎日ストレスを感じて働くより、自分でやったほうが収入が上がると考えるからです。また、上司の給料などで自分の将来が分かってしまい、独立するしかないと思いがちというのも原因の1つでしょう。ブライダルは業界構造上、利益が得られにくい状態にあります。ほとんどの企業は下請けの仕事になっていて、価格を叩かれたり、協賛を求められたりしています。業界全体の法的なリテラシーもまだまだ低く、下請法違反をしている式場も多いです。そうなると必然的に社員の労働量は増え、忙しいけど給料が上がらない状態になり、技術のある人はどんどん独立していきます。ブライダルに限らず、飲食業、美容業など、いわゆる儲からないと言われている業界はこの状態になりやすいです。
3 ウェディングのフォトグラファーの参入
写真を撮っているフリーランスのほとんどが、フィルムからデジタルに移行したように、いつか写真も動画に移行していくのではという不安を抱えています。ブライダルのフォトグラファーも例外ではなく、AIや技術革新によって、誰でも簡単にプロ並みの写真が撮れるようになると考えている人は多いです。そうなると、これまで学んだことや経験、レンズ資産などを活かして参入できる動画市場を選択するのは至極当然のことです。フォトグラファーはレンズの知識や構図・色など、様々な経験が豊富で、従来のブライダルビデオカメラマンよりも即戦力になる可能性が高いです。業者側も、今は元々フォトグラファーの人に動画撮影をお願いしたりしています。これら3つの理由により、今後のブライダルビデオ業界は、確実にフリーランスが有り余る状態になります。そうなれば当然、能力がなければ生き残れないし、代わりの人がいくらでもいるため、ギャラはどんどん安くなっていきます。これからブライダルビデオカメラマンが生き残る道は、自らの技術を高めると同時に、集客や営業、ブランディングの方法などをしっかりと勉強して、より多くのクライアントやエンドユーザーに選ばれる仕組みを築き上げることです。もし、下請けで生き残ろうとしている人は、高単価でちゃんとフリーランスのことを考えている会社にパートナーとして選んでもらい、その中で自分の技術や能力を磨き上げることです。ブライダルのフリーランスはアルバイトの延長の意識程度の方も多く、業務委託契約とはどんなものかを分かっていない場合があります。1つの案件に責任を持つこと、契約上ほとんどの場合成果物に対する報酬であることなので、現場にたどり着くまでの責任も負います。また、原則として拘束時間が長引いても時給で働いているアルバイトとは違うため、延長料金としてギャラが上がることはありません。(契約内容によります)撮り逃しや遅刻、機材トラブルの場合などは法的にはギャラは減額か、契約無効により完全に支払われませんし、技術に対しても責任がありますので、会社側が研修する義務は本来ありません。これは、式場とビデオ業者との関係を想像すればわかりやすいです。撮り逃しがあったけどギャラは欲しいということが言えるのは、どう考えてもおかしいことです。今は人手不足という状況なので、業界全体がかなり甘くなっていますが、この状況も人が余れば変わってしまいます。プロとしての自覚は現場以外でもしっかりと持ち、請求書や納品の期日や普段の時間厳守を徹底しましょう。クライアントはビデオ業者です。お客様からの信頼を得られなければいい仕事がくることはありません。
フリーランスのブライダルビデオカメラマンの問題点
これから先、この業界を生き抜くためにはどうしたらいいのか、その正解にたどり着くためには、まず現状の問題点を考える必要があります。
体力的な衰えや、年齢による価値観の相違への不安
「40過ぎて現場で撮影するのはきついなー」という声はよく耳にします。結婚式の現場に年齢制限はありませんし、いつまでもプレイヤーでいたい人も多いのではないかと思います。しかし、現実にフリーランスの弱点は自分しかいない、つまり身体が1つしかないことにあります。婚礼の現場ではやはり体力が必要になりますし、センスも重要になります。また、新郎新婦が何を求めているか、結婚適齢期のカップルの価値観も理解しておく必要がありますが、年齢を重ねるとともに体力も衰えていきますし、若者の価値観も分からなくなっていきます。
病気によるリスク
ブライダルに携わるフリーランスにとって、病気は大敵です。企業案件などは、最悪リスケができますが、結婚式を別日にしてもらうことは不可能です。ノロウィルスやインフルエンザに撮影前日に感染してしまえば、もうどうしようもありません。誰か別の人に急遽お願いしようとしても、大安などの人気の日であれば別のカメラマンが空いていることもないでしょう。そうなれば当然お客様の幸せな結婚式を台無しにしてしまいます。また、何かしらの病気になって、働けない期間ができれば、その期間の収入はゼロになります。
今後のブライダル業界のビデオカメラマンの未来
さて、先ほどの問題点、どうしたら解決できるかを考えてみます。一番の解決策は、信頼できるチーム、組織を作ることです。自分がいつ倒れても大丈夫な状態を作り上げておかなければ、大切なお客様の結婚式を最悪の思い出にしてしまうかもしれません。しかし、チーム化、組織化を成し遂げることは時間がかかるし、全員プレイヤーでは成り立ちません。誰かがマネージメントする役割をこなし、リーダーとならなければいけません。リーダーに求められることはプレイヤーとしての能力よりも、その他の能力の方です。商品開発、営業、納期管理、品筆管理、教育、仕組み化、財務、法務などその範囲は多岐に渡り、想像以上に大変なものです。ただ逆にそれができなければ、ずっと病気のリスクを背負い続けるか、下請けをやり続けるかになってしまいます。まだまだ歴史の浅い業界で、今後どのように進化していくのかは分かりませんが、結婚式のビデオ撮影をしているフリーランスの方が今後のことを考える上で、少しでもこの記事を参考にしていただければと思っております。
1985年生まれ33歳、東京都練馬区出身
日給1万円以下でアルバイトのビデオカメラマンとしてブライダル業界を経験し、結婚式場の販売価格と現場に払われる金額のあまりの差に疑問を持ち、一案件15000円〜40000円の下請け・孫請けの仕事で結婚式の現場に出ながらフリーランスとして活動を開始した。
25歳の時にFirst Filmというブランドで創業し、新郎新婦が自由な選択肢の中から好きなものを適正価格で選べるようになることを目指し、インターネットで直接選ばれる仕組みを構築。
売上は順調に伸び、2年後の27歳の時に株式会社VARIEを設立。写真や企業向け映像も事業として開始し、創業以来現在まで7年連続で売上最高値を記録。
現在はもう一つの会社、株式会社FOOLを立ち上げ経営の他にも現場の撮影をしながら講師業やコンサルタントとして活動中。