低賃金のフリーランスで成り立っているブライダル業界を変えるために必要なこと

現状のブライダル業界は構造上、低賃金で案件を請けるフリーランスの数が圧倒的に多く、そのおかげで成り立っているとも言えます。ブライダル業界は結婚式場を頂点として、次に提携業者、次にフリーランスという順番で仕事も利益もピラミッド構造になっています。当然その数も結婚式場が一番少なく、フリーランスが最も多いです。お金も一番下のフリーランスに仕事が降りて来るまでに2〜3回は中抜きされます。

なぜブライダル業界はフリーランスの数が多いのか

まずはブライダル業界でフリーランスの数が多い理由を書いていきます。ブライダルは季節変動型のビジネスで、1月2月、7月8月が閑散期となります。ブライダルの企業は閑散期は結婚式自体がないので売上が上がりません。社員やアルバイトを抱えてしまうと、売上がないのに毎月固定費がかかってしまいます。提携している業者の社員やアルバイトが付加価値の高い仕事ができるのは土日の現場なので、閑散期は社員やアルバイトの数が多いと業者は赤字になってしまうリスクがあるわけです。そこで、フリーランスと業務委託契約することで、仕事がない閑散期は固定費を少なくすることができるのです。また、社員やアルバイトと違い社会保険や雇用保険、労災なども支払う必要がないため、その分のコストが浮くというのもメリットの一つとなります。このような理由から、提携業者はなるべく社員やアルバイトを抱えず、閑散期のリスクが少ないフリーランスを抱え込むようになるのです。

なぜブライダル業界のフリーランスの報酬は安いのか

安いと感じるかどうかは人それぞれだとは思いますが、それだけで食べていけるほど高くはないのは確かです。理由は結婚式場やプロデュース会社に一度マージンを抜かれ、提携業者にもマージンを抜かれるからです。フリーランスに支払われる金額は新郎新婦が払った金額の10分の1程度になってしまっていることもよくあります。この仕組みであるうちは、報酬を上げることは難しく、フリーランスが報酬を上げるにはマージンを抜かれる回数を減らすことが必要になります。

各業種別の報酬の相場

ブライダル業界にはフリープランナー、フォトグラファー、ヘアメイク、司会、ビデオグラファー、聖歌隊などの様々な業種がフリーランスで成り立っています。職種別で下請けや孫請けの報酬を調べてみました。あくまでも主観的な相場ですが、参考にしてみてください。

フリープランナー

案件一件あたり60,000円〜80,000円です。高いところは10万を超えるところもあるようです。さらにインセンティブがある場合、商品を売れば売るほど報酬は増えます。月に3件以上引き受けることができればひとまず人並みの収入にはなります。それ以上の報酬を得るには、自分で集客できるようになるしかありません。そうなれば一件あたり30〜50万円以上の収入を得られるようになります。

フォトグラファー

孫請けの仕事が一般的で、相場は20,000円〜30,000円といったところです。当日に撮影して終わりではなく、どの写真を納品するかのセレクトという作業、色補正やトリミングなどのレタッチと呼ばれる作業も金額に含まれている場合が多いので、土日以外にも作業時間がかなり発生します。フリープランナーや結婚式場、プロデュース会社と直接契約するか、インターネットなどで自分で集客できるようになれば、収入は3〜5倍くらいまでなら問題なく上がるでしょう。

ヘアメイク

ブライダルのヘアメイクも孫請けの仕事が多く、結婚式場からヘアメイク事務所に発注があり、そこからフリーランスに仕事の依頼が来る仕組みになっています。相場は30,000円前後で、花嫁のヘアメイクなのか列席者なのか、着付けができるのかなど、条件によって様々です。完全に花嫁のヘアメイクのみだと15,000円〜30,000円ほどでしょう。技術職なので経験や技術によって報酬に差が出てきますが、こちらも大幅に報酬を増やすのであればフォトグラファーと同じように新郎新婦の間に入る業者をなくせばいいのです。

司会

打ち合わせが1回のところと複数回あるところがありますが、基本的にはこちらも15,000円〜30,000円が相場となります。司会業は先行投資するものもなく、結婚式以外でも需要は山ほどあるのですが、差別化の難しい業種でもあります。元アナウンサーや現役アナウンサーなどの肩書きがあれば別ですが、地道に実績を積み重ねて信頼を得る方法が一番堅実と言えます。男性司会者の場合は全体の中で人数が少ないため、やり方次第では選ばれやすくなるでしょう。

ビデオグラファー

映像は写真に比べると需要が少ないですが、この5年間ほどで急速に求められてきている職種です。婚礼一件あたりの相場は15,000円〜30,000円で、こちらも自分で集客したりすれば10万円以上の単価にすることも可能です。映像も結婚式以外の需要がかなりある分野なので、フリーランスの方も土日は婚礼案件、平日は別の撮影という方も多いです。しかし、若い人材がなかなかいない状態が昔から変わっていないのが課題の一つです。

聖歌隊

挙式時のみ必要な場合が多いため、拘束時間は2時間ほどで、一案件あたり2,500円〜4,000円が相場となります。1日で4件以上挙式があれば1万円以上になりますが、拘束時間に比べ割安となってしまいます。楽器も自分で買う場合はメンテナンスや買い替えもありますので、かなり厳しい世界と言えます。平日は会社員で土日に好きなことを副業にしているスタンスならば問題ないですが、これだけで生計を立てるというのは難しいです。

単価を上げるために必要なことは2つ

ブライダル業界のフリーランスが単価を上げる、もしくは収入を上げるために必要なことは次の2つになります。

今の環境を変えずに少額でも単価を上げる場合

まずは技術を上げることが真っ先に思いつくと思いますが、実はフリーランスが思っているほど仕事を提供する側は技術を最重要だとは思っていません。それよりも、電話やメールの返信の早さや期日・納期・時間を守れるかどうか、人当たりの良さ、ビジネスマナー、常識を持ち合わせているかなどを見ています。もちろん技術も大切なのですが、前提条件が満たされていないのであれば、どれだけ技術があっても一緒に仕事をしたいとは思いません。日頃の行いからコツコツ信頼を勝ち取ることが大切です。以前書いた記事にも単価を上げる方法を書いているので参考にしてみてください。参考記事『下請け・孫請けの仕事の単価を上げるには??』

新郎新婦から直接選ばれるか、式場やフリープランナーに選ばれるようにする場合

結婚式場と個人のフリーランスが提携することは、まだまだ難しいのが現状です。フリープランナーであれば提携はもちろん可能ですが、安定した案件数はないため、複数のフリープランナーと提携する必要があります。しかし、それでは仕事が重なったときに断らざるを得ない状態になってしまうため、フリープランナー側からすれば困ってしまいます。結局チーム化・組織化する必要性が出てくるのですが、それも十分な案件数がなければ難しいです。一方新郎新婦から直接選ばれるのであれば、自分自身の努力で集客できるし、埋まっている日は心苦しさはあるにしても断ることもできます。今の時代SNSやWEBの知識があれば、頑張れば誰でも集客できる時代です。

ブライダル業界がどう変わればフリーランスの待遇が良くなるのか

ここまではフリーランスがどう変われば報酬を上げられるかを書きましたが、今度はブライダル業界がどう変わればフリーランスの待遇が良くなるかについて書いていきます。こちらも以前書いた記事を参考にしてみてください。『ウェディング業界のこれから先の未来はどうなるの?』

まずは無駄なコストの削減

ブライダル業界の企業は体質が古く、物凄く無駄なことをしている事実に気づいていません。例えばFAXが未だに主流になっていることが最たる例です。集客も媒体依存から抜け出せずに、毎年膨大な広告費をかけています。また、離職率が高いため、毎年採用コストや教育コストも多く支払わなければなりません。ITの時代にFAXは相応しくないし、無駄な工数を生み出すだけです。コミュニケーションツールは便利なものがたくさんあります。情報漏洩を気にしている企業も多いようですが、一番リスクが高いのは紙で、情報漏洩全体の70%は紙媒体からと言われています。集客もWEBの知識とマーケティングの知識があれば自社で簡単にできます。無駄な工数を減らせばスタッフも負担が減り、離職率も抑えられ、採用・教育コストも低く設定できます。

不透明な金額をやめること

今の時代、売り手が説明できない金額で商品を売っている企業はボッタクリと言われます。無駄なコストを削減した分は高額なマージンをやめて適正な紹介料に戻す必要があります。通常他業界でも顧客紹介料は10%前後です。しかもお客様には乗せないで業者からもらいます。仕入れとして見ているからいくら乗せてもいいという捉え方もありますが、お客様にとって誠実な価格にするべきです。価格の半分はマージンですと言われて納得する人はいません。より良い商品やサービスを作っている業者と提携し直し、下代を叩かずに本当にオススメできるものを売るべきです。そうすればプランナーも商品やサービスを売りやすくなりますし、式場全体の付加価値が上がり、今の金額でも満足する結婚式が挙げられるようになります。

ここまで実行できればフリーランスの対価も上がる

無駄なコストを削減し、価格が適正になれば技術の高いフリーランスの価値は上がります。業者も安売りではなく、より良い商品やサービスを提供しなければならなくなるため、フリーランスの金額を上げてでも良い人材を探し出します。適正価格になれば今よりも下代は上がり、業者側も商品改善や開発、人材に利益を分配できるようになり、式場やプロデュース会社の提供する結婚式の付加価値は上がります。当然フリーランスも努力を惜しんでいては選ばれないので、技術だけでなく事業者としての当たり前を身に着けなければなりません。

 

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